筋力アップで生活習慣病を予防しましょう〜総合保健福祉センター「あゆみだより」(2023年2月)
加齢にともなって、私たちの体も変化しています。変化にともなって糖尿病などの生活習慣病も発症しやすくなります。今回は加齢にともなって起きる体の変化と生活習慣病を予防する方法についてお話します。
加齢にともなう体の変化
加齢とともに起こる体の変化としては、筋肉や骨量の減少があります。ホルモンの減少に伴い、男性では40歳代、女性では50歳代に大きく減少することがわかっています。また、食べたものを消化して吸収する力も弱まるため、筋肉や骨を作る力も減少します。筋肉量が減り、相対的に内臓脂肪の蓄積が多くなることで糖尿病などの生活習慣病を発症しやすくなるため、筋肉量を維持または増加させることは、生活習慣病予防には重要になります。
筋力が低下すると生活習慣病を発症しやすくなります
食べた食事の4割は、筋肉や脂肪細胞でエネルギーとして使われます。筋肉量が多いと食事でとった糖は多く消費されますが、筋肉量が減少すると消費される糖も減少するため、使われなかった糖が血液に余り、血糖値が上がりやすくなります。また、筋肉や脂肪細胞に糖を取り込ませて血糖値を一定にする働きをするホルモンを「インスリン」といいますが、これは60歳を過ぎると分泌量が減少します。インスリンが不足することで、細胞に取り込まれるはずの糖が血液中に余りだすと、血糖値が上昇します。筋力量の減少とインスリンの減少による血糖値上昇が重なると糖尿病などの生活習慣病を発症しやすくなるため、特にインスリンの分泌が低下する60歳頃からは筋力の低下に注意する必要があります。
筋肉増加に重要な「たんぱく質」
加齢にともなって起きる筋肉や骨の減少を防ぐためには、「たんぱく質」をしっかりとることが重要です。たんぱく質は筋肉や骨などを作る材料になるため、不足すると筋肉や骨が減少するリスクが高まります。日本人の食事摂取基準によると65歳以上の人が必要な1日のたんぱく質量は、20〜30代の若者と同じです。ぜひ毎日の食事にたんぱく質を多く含む食材を取り入れましょう。食材の目安量としては手の平の大きさで量をはかる「てばかり法」がおすすめです。
たんぱく質は魚、肉、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれています。量を食べられない方は、栄養価が高い魚、肉、卵を優先して食べましょう。(※慢性腎臓病の方やたんぱく制限のある方は主治医に相談してください。)また、たんぱく質を多くとるために肉をたくさん食べるなど同じ種類のものを多くとりすぎないように注意してください。たんぱく質以外の栄養素に偏りが出てしまうためです。先ほど紹介した食材の種類と量を目安に3食にバランスよく取り入れることが重要です。
また、胃や腸での消化、吸収をよくするために、食事の際はしっかりかむことも重要です。しっかりかむことで食材が細かくなって胃に送られるため、胃や腸で吸収されやすくなります。食事時間の目安としては1食あたり15分以上かけて食べることを意識してみましょう。ゆっくり食べることで食べたものが腸へ送られるまでに時間がかかるため、食後の血糖値の上昇も抑えられます。
筋肉が多いのは太ももとおしりの筋肉
たんぱく質の摂取とあわせて運動を行うと筋肉の増加に効果的です。運動を行うことで筋たんぱく質の合成が高まり、筋肉量の増加につながります。全身の筋肉の6〜7割は太ももとおしりなどの下半身に集中しています。そのため、下半身の筋肉を鍛えることで効果的に筋力アップにつながります。
食後の運動は高血糖予防に効果的
気を付けたいのは、朝起きてすぐの運動や空腹時の運動です。何も食べていない状況で運動すると筋肉から分解されてエネルギーが生み出されるため、筋肉の減少につながる可能性があります。また、糖尿病の方では血糖値が乱れる要因にもなりますので、運動する際には、軽めの食事やおにぎり、果物だけでも食べてから行うにしましょう。運動を行うおすすめ時間帯は、食後30分から1時間です。食後は血糖値が高くなりますので、食後に運動を行うと筋肉が糖を消費するため、高血糖予防に効果的です。
要介護の原因疾患と食事との関係
熊本県の後期高齢者の要介護の原因疾患として最も多い割合を占めるのは認知症です。認知症の多くは、発症の10〜20年以上前から脳細胞の変性が起こっているとされています。変性が起こる理由の一つとして考えられるのは血中ホモシステイン濃度の上昇です。認知症患者では血中ホモシステイン濃度が高いという報告があります。血中のホモシステインはビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が不足すると高くなります。ビタミンB6、B12は、マグロやカツオなどの赤身の魚やさんまなどに多く含まれています。葉酸は小松菜やほうれん草などの緑の葉野菜に多く含まれています。今日の食事が明日の体、そして10年後の体を作ります。この機会に毎日の食事を振り返ってみましょう。
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