高齢者虐待を引き起こさないために「福祉だより」(R6.6月号)
高齢者虐待を引き起こさないために「福祉だより」(R6.6月号)
高齢者虐待の件数は、自宅などで発生する養護者による虐待、施設などで発生する養介護施設従事者等による虐待ともに増加傾向であり、令和4年度に熊本県において発生した養護者による虐待は264件。養介護施設従事者等による虐待は41件発生したとされています。
年々、増加傾向であるため、町や地域などの単位での取組が求められています。
高齢者虐待や権利擁護とは、どういうものか。
高齢者虐待とは、「高齢者の人としての尊厳を傷付ける行為」であり、主に以下の5つの形態に分類されます。
身体的虐待
暴力行為などで、身体に傷やあざ、痛みを与える行為
心理的虐待
高圧的な言葉や態度、無視や嫌がらせなどによって苦痛を与える行為
性的虐待
本人の合意もなく性的な行為を行ったり、強要したりするような行為
経済的虐待
財産や金銭の無断使用や、本人の金銭の使用を理由なく制限するような行為
介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)
介護や生活の世話を行っている家族が、介護や世話を放棄するような行為
※近年では「セルフネグレクト」(自ら、自分の生命・健康・生活を損なうまま放置している状態)の高齢者も多く、他の虐待同様に周囲からの支援が望まれます。権利擁護とは、「自己の権利を表明することが困難な寝たきり・認知症の高齢者や障がい者の代わりに代理人が権利を表明すること。」とされ、本人の尊厳を保持していくための考え方です。
高齢者虐待発見につながるチェックリスト
高齢者虐待を早期に発見し対応するため、高齢者や介護者からのサインを読み取りましょう。
(以下では高齢者虐待チェックリスト(発見編)から抜粋したものを掲示しています。)
身体に小さな傷が頻繁に見られる 。 |
怖いから家にいたくない等の訴えがある。 |
不規則な睡眠(悪夢、眠ることへの恐怖、過度の睡眠等)を訴える。 |
おびえる、泣く、叫ぶなどの症状がみられる。 |
無力感、あきらめ、投げやりな様子になる。 |
急に怯えたり、恐ろしがったりする。 |
経済的に困っていないのに、利用負担のあるサービスを使いたがらない。 |
預貯金が知らないうちに引き出された、通帳が取られたと訴える。 |
部屋に衣類やオムツ等が散乱している。 |
寝具や衣類が汚れたままの場合が多い。 |
昼間でも雨戸が閉まっている。 |
薬や届けたものが放置されている。 |
他人の助言を聞き入れず、不適切な介護方法へのこだわりが見られる。 |
高齢者の健康や疾患に関心が無く、医師への受診や入院の勧めを拒否する。 |
郵便受けや玄関先等が、手紙や新聞で一杯になっていたり、電気メーターが回っていない。 |
家族と同居している高齢者がコンビニやスーパー等で一人前のお弁当を頻繁に購入している。 |
以上の項目で該当するものが多いほど、虐待の可能性が高い状態です。
認知症と高齢者虐待の関係性
全国的なデータによると、虐待を受けた高齢者(介護保険認定済みの者)の約7割の方には、何らかの認知症の症状が見られます。
介護、特に認知症介護の負担が、虐待と大きく関わっていると考えられ、介護負担の軽減には認知症についての正しい知識習得が大切です。認知症の早期発見と適切な支援で虐待を未然に防ぎましょう。
認知症といっても、様々な原因があり、症状もさまざまです。認知症が疑われる場合は、早期に専門医を受診することをお勧めします。
また、町では毎月第3水曜日に、認知症疾患医療センターと合同で、認知症相談会を開催しています。相談は事前予約制となっているため、詳細は福祉課地域包括支援係(TEL:234-1114)へご連絡ください。
「虐待」=「悪者」というわけではありません
高齢者に対する暴力等は決して許されるものではありませんが、適切な介護の方法や、認知症への対応方法が分からないために、つい手をあげてしまう。介護負担に加え、失業中で経済的に困っている…など、高齢者虐待の背景には様々な要因が隠れています。
虐待を根本的に無くしていくためには。虐待を受けている方だけではなく、虐待を行ってしまったものに対しても支援を行っていくことが大切です。
高齢者の権利擁護のために活用できる事業や制度
認知症や物忘れ、障がい等により、日常的な金銭管理や重要な財産管理や困難になっている方に対し、安心して生活を送るために利用できる権利擁護の制度について、ご紹介します。
地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)
事前に契約を締結することにより、福祉サービスの相談についての手続きや利用するための支援、日常的な金銭管理等の支援を行います。利用に関しては、甲佐町社会福祉協議会(TEL:234-1192)へお尋ねください。
成年後見制度
判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりすることが無いように、法律面や生活面で支援する制度です。(判断能力が低下する前に候補者を選任しておく任意後見制度や、判断能力の低下が見られた後に後見人等を選任する法定後見制度があります。)
高齢になっても、安心して地域で生活が出来るように、皆さんを支えるための法律や制度があります。
虐待や認知症等によって自宅での生活が続けられないというような状況にならないように、そして、問題が困難になってしまう前に、介護保険サービスの申請や、専門相談窓口などをうまく活用しましょう。
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