甲佐町の文化財探訪 「芝原の板碑(いたび)」〜平成30年11月号
更新日:2018年11月1日
「芝原の板碑(いたび)」
まさかこんな所に?というのが正直な気持ちです。
この甲佐町にも正確に数えてはいませんが、ある程度の数の板碑が存在します。板碑は、主に供養塔(くようとう)として用いられた石碑の一種です。その形態的な特徴は「上部を三角に切り、その下に梵字(ぼんじ)または仏像を表し、左右の下方に供養者(くようしゃ)、造立年月日、趣旨(しゅし)などを刻したもの」です。
私がこれまで見てきた板碑の大半は、村の入口や小高い丘に建てられているものばかりでした。しかし、今回見つかった板碑は、そのどちらにも属していません。それは個人の家の庭から見つかりました。
現地調査を指導していただいた前川清一氏(熊本県文化財保護審議会委員)によれば、「芝原の板碑は砂岩でできており、板碑下部を欠損し、やや左側に傾いて置かれています。このような形状の板碑は、熊本県では十五世紀後半から出現し、十六世紀前半に集中的に建立されており、今回の板碑は十六世紀半ばの建立とみられます。板碑には夫婦とみられる男女の戒名が彫られており、生前供養がされたのではないかと考えられます」とのことでした。
当時は、死が常につきまとい、神や仏が身近な存在であったとしても、夫婦でこのような板碑を建立できたのは、ある程度の地位にあるか、財力があったからではないだろうか、と考えるのは早計(そうけい)でしょうか。
文責・甲佐町文化財保護委員 石坂 妙(吉田区)
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