甲佐町の文化財探訪「南三箇の大平観音堂と大平堤」〜令和7年1月号
更新日:2025年1月1日
「南三箇の大平観音堂と大平堤」
南三箇の大平観音は、熊本南カントリークラブ(ゴルフ場)の中にあります。ゴルフ場の一角に、こんもりとした神木と共に三基の石碑が並んでいます。その一つの石室には、嘉永2年(1850年)に建立された十一面観音が安置されています。
この大平観音の横には、水を湛えた大平堤があります。この堤は、江戸時代末期の三賀村(現在の南三箇)で、重い年貢に苦しみながらもそれを乗り越えた村人たちの歴史そのものなのです。
当時の三賀村は湿田や白真土(しらまつち)の畑、そして高すぎる村高が原因で年貢を払えず、荒れ地が増えていました。村人たちは水田改良や畑の水田化を試みましたが、堤の決壊や借財の重圧に苦しみました。最終的に堤を再建し、段々畑を棚田に変えることで村の再生を図りましたが、借金返済に四十四年を要しました。
それでも村は立ち直り、村人の喜びは大変なものでした。この年の秋、収穫を感謝すると共に再び決壊しないようにと堤防上に建立されたのが、この大平十一面観音です。その後も昭和や平成に至るまで改修が続けられました。南三箇の歴史と重なるのが大平堤であり、大平観音堂です。
なお、現在大平観音堂と大平堤は熊本南カントリークラブ内にあり、飛んできたゴルフボールによるケガなどの危険がありますので、見学はご遠慮ください。
文責・甲佐町文化財保護委員 赤星 眞照(有安区)
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