甲佐町の文化財探訪「塔の木さん古墳と周辺の古墳など」〜令和2年1月号
「塔の木さん古墳と周辺の古墳など」
甲佐町の麻生原には、塔の木さん古墳と呼ばれる甲佐町で現存する唯一の古墳がある。かつては、長さ30メートルの円墳であったと言われ、この辺りを治めた豪族の墓とされる貴重な遺産である。しかし、現在では高さ約2.5メートル、長さ20メートルの小山が残り、その西側に大石が露出している。この大石の状態から6世紀頃に造られた横穴式石室と思われる。円墳は隣町の熊本市南区城南町の塚原古墳群(国指定史跡)に多数ある。他にも下益城郡美里町の四十八塚という地区には4基の石棺(せっかん)があり、内部には円形の紋様(もんよう)が施された装飾古墳(そうしょくこふん)もある。
また、甲佐町には横穴墓(よこあなぼ)※1が3カ所存在する。船津のものは町指定文化財であり、近くには磨崖五輪塔も存在する。下豊内区のものは免の山の西側斜面にある。中山のものは、乙女台地の西側斜面に数十基残っている。
さらに、麻生原区周辺には、かつて県内でも数少ない支石墓(弥生時代)が存在した。支石墓は、ドルメンとも言われ、ヨーロッパの新石器時代に起源を持つ墓のことで、甲佐町にも有力な集団が存在したと言われている。発見当時は12基以上が確認されたが、現在ではほとんど残っていない。
失われた遺跡は、もはや復元はできない。これらは、私たちの先祖が確実にこの地で生きた証であり、その先祖がいて現在の私達がこの地で存在していることは、紛れもない事実であると思う。残された遺跡を守り後世に伝えることが、現代に生きる者の使命ではないだろうか。
※1古墳墳時代後期を中心とした埋葬方法のひとつで、崖面や斜面に横穴を穿(うが)って死者を埋納する施設(お墓)
文責・甲佐町文化財保護委員 久米 啓史 (麻生原区)
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